【アイアムサム】の作品情報(スタッフ・キャストなど)
「アイアムサム」は、2001年に公開され大ヒットしたアメリカ映画です。
ショーン・ペン演じる知的障害を持つ父親と、ダコタ・ファニング演じる幼い娘との家族愛を描いた感動作です。
痛いほどにまっすぐで純粋な愛と、ダコタの可愛さに注目が集まりました。
父親役のショーンはアカデミー賞主演男優賞にノミネート、娘役のダコタ・ファニングは数々の賞を受賞。
劇中では、多くの豪華アーティストによるビートルズのカバー曲を利用しており、その点でも世間の話題を集めた作品です。
あらすじ解説
父親サムは生まれつき知的障害を持っており、7歳ほどの知能しかありません。
そんな中でも、時給8ドルのスターバックスで仕事をしながら、ホームレスの女性レベッカと一緒に暮らしていました。
そしてレベッカが妊娠、娘のルーシー・ダイアモンドが生まれました。
しかし子供がいらなかったレベッカは、退院後に姿をくらまします。
子育てなど全くわからず途方に暮れるサムですが、隣の家に住む女性アニーや、同じように知的障害を持つ4人の仲間たちに支えられながら、子育てに奮闘します。
ルーシーは、父をはじめ周囲の人の愛情をいっしんに受けながら、すくすくと成長していきます。
ところが、ルーシーが小学校にあがり7歳を迎えたころ、ある問題が起こります。
たまたまサムが売春婦リリーと店に居合わせたところを警察官に逮捕され、売春の逮捕歴がついてしまったのです。
このことをきっかけに、サムは児童福祉局から目をつけられるようになります。
そして父親としての養育能力がないと判断され、娘ルーシーは施設で保護されることとなりました。
失意にくれる父は、愛する娘を取り戻すためついに法廷で争うことを決意。
エリート弁護士のリタに弁護を依頼します。
リタは、社会福祉という体裁目的で弁護を引き受けます。
しかし法廷では、証人である友人たちの証言はことごとくうまくいかず、ついにルーシーは共同親権で里親に引き取られてしまいます。
悲しみに暮れるサムですが、知的障害をもつ自分のもとにいるよりも、娘が幸せになれるのではないかという葛藤に悩みます。
そんな姿に、弁護士リタは親子の絆を強く感じ、助けたいという気持ちを心から抱いていくようになります。
そして、サムが里親の住む近所に引っ越すことを提案。
仕事も変え収入も安定させ、ルーシーと会える環境づくりをととのえていきます。
一方ルーシーは、近所に越してきた父を毎晩訪れます。
そんな娘を、サムは毎晩、里親の家へ送り届けるのです。
ルーシーを養子縁組にしたいと考えていた里親でしたが、誠実なサムの対応や、ふたりの親子としての本当の家族愛を知り心を変えていきます。
最後にはふたりは、お互いが好きなときに会えるという権利を得ることができます。
みどころのポイント
7歳程度の知能しかない父親と、7歳をむかえ父親の知能をこえていく娘。
この二人の関係性が次第に変化していく点こそが、この物語の一番の見どころです。
娘ルーシーにとって、サムは幼いころからずっと大好きな父親であり、そして友人のような存在でもありました。
ふたりのやり取りは、思わずこちらまで顔がほころんでしまうような、穏やかで優しい空気をつくりだしています。
ところがルーシーが成長していくにつれ、この関係性は長くは続かなくなります。
自分の父親がまわりの友だちの父親とは違うことに、ルーシーが気付いていくのです。
「お父さんは普通のお父さんとなぜ違うの?」というルーシーの純粋な質問に、悲しそうな顔で「こんなお父さんでごめんよ。
」と答えるサムの姿に、胸がしめつけられます。
そして次第に、ルーシーの知能は父親を超えていきます。
これまでしてもらっていた本の読み聞かせを、今度は娘が父にするようになり、父の読めない単語を娘が教える側になったのです。
そんな変化にルーシーの心は戸惑い、恐怖を感じるようになります。
サムもまた、娘の幸せを願い葛藤が続きます。
そんな紆余曲折がありながらも話の中で一貫しているのは、お互いが親子という強い絆で結ばれているということ。
状況が変わってもサムは娘ルーシーを愛し、ルーシーもまた父サムを愛する気持ちはぶれることがありません。
そんなふたりの愛情は、苦しいほどに純粋です。
また、物語とは別に注目したいのがサウンドトラック。
劇中には、ビートルズの曲が多く使われています。
これは、作品をつくるにあたり実際に取材をした障がい者施設に、多くのビートルズファンがいたことがきっかけでした。
ところがビートルズの曲は映画での使用料が高額で、使用を断念。
そこで他の豪華アーティストにカバーを依頼し使用したところ、これが大ヒットとなりました。
随所随所で流れてくるビートルズのやさしい名曲の数々が、ストーリーの魅力を引き立てていきます。
また映画の中には実際の障がい者の方も出演しており、こうした点にも注目しながら見るのもおすすめです。
2001年に公開された映画ではありますが、現代社会においてもリアルな議題として取り上げることのできる「知的障害と家族の愛情」というテーマ。
時代の流れを感じることのない名作です。