【ライフイズビューティフル】の作品情報(スタッフ・キャストなど)
「ライフイズビューティフル」は、1997年に公開されたイタリア映画です。
第二次世界大戦時のイタリアを舞台に、ユダヤ人迫害(ホロコースト)の歴史を、ある親子の人生に焦点をあてて描いています。
監督ロベルト・ベニーニ自ら、主演を務めたことでも話題となりました。
本作品はカンヌ国際映画祭で審査員グランプリを受賞。
第71回米国アカデミー賞でも主演男優賞、作曲賞、外国語映画賞を受賞するなど、世界中から高く評価されています。
あらすじ解説
舞台は1937年のイタリア、トスカーナ地方にある小さな街。
ユダヤ系イタリア人のグイドは、小学校の教師をしていた美しい女性ドーラと出会います。
一目で恋に落ちたグイドは、ユーモアあふれる方法で猛アタックを開始します。
ドーラには婚約者がいたものの、グイドの明るく陽気な姿に次第に心惹かれていきます。
そしてついに婚約パーティーの席で、グイドは大胆にも婚約者からドーラを奪い去り、ついにふたりは結ばれます。
そしてふたりの間に息子のジョズエが誕生しました。
三人は、ささやかながらも幸せな生活を送っていました。
しかしながら第二次世界大戦がはじまると、イタリアの小さな町もナチス迫害の波に飲み込まれていきました。
ついにある日、父グイドと息子ジョズエ、さらに叔父のジオが強制収容所に連行されてしまうのです。
のちに妻ドーラも、家族を心配し自ら女性収容所行きの列車に乗り込みました。
強制収容所に集められた人々の生活は、まさに地獄のような死と隣あわせのものでした。
恐怖や絶望といった暗闇から息子を守るため、父は持ち前のユーモアさを発揮し息子にある嘘をつきます。
「これはゲームなんだ。
泣いたり、ママに会いたがったりしたら減点。
いい子にしていれば点数がもらえて、1000点たまったら勝ち。
勝ったら、本物の戦車に乗っておうちに帰れるんだ」と。
母と引き離され不安におびえていたジョズエでしたが、その日を境に強制収容所での生活は”点数を集める楽しいゲーム”となりました。
過酷な労働に耐えながら、家族でまた会える日を信じ生き抜く日々。
月日は流れ、ついに戦争が終わり収容所が撤退することとなりました。
グイドとジョズエは逃げ出しましたが、妻ドーラを探している最中に、グイドは衛兵に捕らえられてしまいます。
息子がみている前では決して悲しい顔をしてはいけない、という強い意志のもと、グイドは最後の最後までユーモアたっぷりに息子へサインを送り続けます。
そしてそれが、父の最後の姿でした。
さいごのナチス兵が撤退するまで隠れ続け朝を迎えたころ、外に出たジョズエの目の前に、アメリカ兵の大きな戦車が現れます。
それはまさに、父が自分に話してくれたゲームのご褒美そのものの戦車でした。
戦車に乗せられたジョズエは母ドーラをみつけ、ふたりは感動の再会をはたします。
みどころのポイント
この物語の見どころは、なんといっても強制収容所で父が息子についた嘘です。
この嘘が、収容所での物語の流れを大きく変えていくキーポイントとなっています。
絶望と死の恐怖がうずまく収容所の生活をゲームに見立て、生き抜くことへの活力と希望を見出させたのです。
まだ幼いジョズエにとっては、「これはゲームである」というユーモアあふれる嘘だったからこそ、強く心に響いたのでしょう。
父グイドは一貫して、家族の前では陽気で明るいキャラクターを演じ続けます。
それは、どんな危機的状況に置かれていても、決して生きることへの希望を失わない、失わせないという強い気持ちからくるものでした。
しかし過酷な労働や減っていく収容所の人々を前に、一人でいるときには、自分自身も不安や絶望に押しつぶされそうなシーンがあります。
それでもまた家族の前では、ピエロの様におどけてみせる父グイドのギャップが、見ていてたまらなく切なくなります。
物語の終盤、戦争が終わりを迎え収容所から親子で逃げ出していくシーンでは、これまでの苦しい生活をふりかえり未来への高揚感が高まります。
しかし、最後の最後でグイドが捕らわれてしまったときの衝撃は、何度見ても心臓が止まるほどの衝撃を受けます。
そしてそんな状況においても最後の最後まで嘘をつきとおし、ユーモアたっぷりにおどけながら息子の前から姿を消す父の姿には、苦しいほどに胸が締め付けられます。
戦争を描いたストーリーは、事実に基づき残虐で暗い印象をうける作品が多くあります。
もちろん本作品も過去の忌まわしい事実をもとにしており、目をそむけたくなるような悲しいシーンがあることも事実です。
ですがその悲惨さを前面に取り上げているのではなく、家族の愛情に焦点をあて美しいストーリーとして描きあげている点も、この作品のすばらしさの一つです。
特に最後のシーンで父が捕まり絶望的な気持ちになってからの、息子の前にあらわれる一台の戦車には、まさに「ライフイズビューティフル!」と思わずにはいられません。
母親とも再会でき、その喜びを全身で表現するジョズエの純心無垢な演技に、最後は涙と笑顔で見終えることができる歴史に残る名作です。