【シンドラーのリスト】の作品情報(スタッフ・キャストなど)
「シンドラーのリスト」は、1993年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の映画です。
第66回アカデミー賞では、最優秀作品賞を始めとして監督賞など7部門で受賞しています。
主役のオスカー・シンドラーは、俳優のリーアム・ニーソンが演じました。
「シンドラーのリスト」の舞台は第二次世界大戦中のポーランドで、ドイツ人の実業家であるオスカー・シンドラーが1000人以上ものユダヤ人の命を救った実話を元にしています。
あらすじ解説
世界では第二次世界大戦が勃発し、ポーランドはドイツ軍に占領されていました。
ポーランドの都市クラクフもドイツ軍の占領下に置かれています。
ユダヤ人を蔑視するナチス党が率いるドイツ軍はクラクフに住むユダヤ人に対して、クラクフ・ゲットーと呼ばれる隔離居住地区に移住を強制していました。
ちょうどその頃、ドイツ人でナチス党員の実業家オスカー・シンドラーはクラクフにやってきたところでした。
戦争を利用して、一儲けすることを考えていたからです。
シンドラーはクラクフ・ゲットーの近くの工場を手に入れ、有能な会計士イザック・シュターンを雇い入れました。
シュターンはクラクフ・ゲットーに住むユダヤ人達を低賃金で集めて働かせたので、シンドラーは大きな財産を築きます。
彼らが低賃金で働いていたのは、クラクフ・ゲットーに留まるためでした。
クラクフ・ゲットーに居住できるのは労働者とその家族だけだったので、職に就くことが出来ないと強制収容所送りにされてしまったからです。
シンドラーはユダヤ人を安価な労働力とみなしていましたが、彼らが虫けらのように扱われているのを見て嫌悪感を覚えてもいました。
そんな中、冷酷なアーモン・ゲート少尉が、クラクフに赴任してきます。
クラクフ・プワシュフという強制収容所の所長になってゲート少尉とその部下達は、クラクフ・ゲットーやクラクフ・プワシュフでユダヤ人達を次々に殺害していきました。
シンドラーの工場で働くユダヤ人達にも危機が迫り、シンドラーの心境も徐々に変化します。
大人達が連行される中、赤い服を着た年端もいかない少女が隠れる姿に胸を痛めたからです。
シンドラーは強制収容所内に私設の収容所をつくり、工場の従業員達が強制収容所に送られるのを防ぎます。
ナチスの敗戦ムードが高まった頃、ナチスは証拠隠滅を図って収容所を閉鎖し、残ったユダヤ人達をアウシュビッツに送って虐殺しようとしていました。
そこでついにシンドラーは、従業員達を故郷のチェコに連れて行くことを決意します。
強制収容所の所長であるゲートには多額の金を握らせて工場を移転することを承知させたのです。
ユダヤ人の数をリストアップし、全財産を投げうってシンドラーは彼らを救いました。
みどころのポイント
「シンドラーのリスト」の見どころは、ユダヤ人を助けたオスカー・シンドラーの心の変化や葛藤を丁寧に描き出しているところにあります。
シンドラーは聖人君子でもなければ、まるっきりの善人というわけではありません。
最初からユダヤ人を助けるためにナチス党と戦ったわけでもないのです。
それどころか、最初は戦争を使って金儲けをしようと企む金銭主義の人物でした。
ユダヤ人の事も単なる安い労働力としてしか見ていませんでした。
そんなシンドラーでしたが、ナチス党からひどい扱いを受けるユダヤ人達の姿を見て心境に変化が生まれ始めます。
ゲート少尉やその部下による殺戮には思わず顔を歪ませてしまいますが、それにより戦争の悲惨さや人を失う哀しみがダイレクトに伝わってきます。
「シンドラーのリスト」は全体を通してモノクロ映画になっていますが、赤い服の少女だけはカラーで表現されています。
全体的に暗い雰囲気が漂う中で、少女の鮮やかな赤い色がとても印象的で目に焼き付きます。
シンドラーが死体の中から赤い服の少女を見つけた時のシーンは、シンドラーに感情移入してしまい自然に涙が流れます。
シンドラーは金儲け至上主義の実業家でした。
そんな金銭主義の人物が、全ての財産を捨ててユダヤ人達を助けようとする姿には心を打たれること間違いありません。
人間は全てが善人という人もいなければ、全てが悪人という人もいません。
善と悪が複雑に内在しており、「シンドラーのリスト」ではそういった矛盾を孕む人間の本質がえぐり出されています。
監督を務めたスティーブン・スピルバーグというと、トレジャーハンターの大冒険を描いた「インディージョーンズ」のシリーズや宇宙人と子供の交流を描いた「E.T.」などの作品が知られています。
夢や希望を膨らませるワクワクするようなこれらの作品とは違って、「シンドラーのリスト」は戦争の悲惨さや矛盾を描いた胸に迫る作品です。
「シンドラーのリスト」は実話を元にしているだけあって、ドキュメンタリーを見ているようなリアリティを追求した映画になっています。
流れている音楽も美しく、哀愁が漂うヴァイオリンの調べは映画の雰囲気をより叙情的にしてくれます。