【プラトーン】の作品情報(スタッフ・キャストなど)
1986年にアメリカで公開されたベトナム戦争を題材とした映画です。
監督はオリバー・ストーン、主役のクリス・ティラー役にチャーリー・シーン、ボブ・バーンズ二等軍曹にトム・ベレンジャー、エリアス・グロージョン三等軍曹をウィレム・デフォーが演じました。
600万ドルというそれほど高くない予算で製作されましたが第59回アカデミー賞で作品賞・監督賞・編集賞・録音賞を受賞し、第44回ゴールデングローブ賞でもドラマ部門作品賞・監督賞・助演男優賞をトム・べレンジャーが受賞しています。
あらすじ解説
ベトナム戦争が激化した時、新兵としてクリス・ティラーが派遣されました。
そこは戦争が膠着状態となったために指揮が低下していたキャンプであり、大麻が蔓延してクリスはその現状に驚きます。
内部ではバーンズ二等軍曹とグロージョン三等軍曹の派閥に分かれていて、この二人も一触即発の状態にありました。
隊は戦争による疲労からか捕虜に対する暴行や襲撃した村での虐殺や婦女暴行、略奪が相次いでいて、国のために大学を中退してまで志願して参加したクリスは絶望していきます。
隊はベトナム兵による攻撃で四方を囲まれて窮地に陥り、捕虜となった敵の兵士に撤退命令を出すように強要します。
それに同意しない態度に業を煮やしたバーンズは捕虜の一人を射殺してしまいます。
これによってグロージョンは軍規違反で軍法会議に訴えると言いました。
これによってバーンズはグロージョンを殺すことを決意しました。
隊は敵の待ち伏せ攻撃に遭い、前方と後方に敵兵に挟まれて全滅の危機を迎えます。
何とかヘリによる救援で逃げ出すことに成功したクリスでしたが、この戦いでグロージョンが敵の銃弾によって死亡してしまったのですが、これは偶然に戦闘中に遭遇したバーンズがグロージョンを撃ってそこに置き去りにしたためであり、クリスはヘリの中でのバーンズの様子からそれを悟ります。
復習に燃えるクリスに対して仲間はバーンズの経歴から返り討ちに遭うだけとして止めるように説得しますが、グロージョンを尊敬していたクリスはその怒りを消せません。
隊は完全にバーンズが仕切る状態となり、やりきれない日々を送っていた時、隊は敵からの夜襲に遭います。
それは司令部をも巻き込んだ巨大掃討作戦となり、抵抗は無理として司令部は自分達のところに空爆するように本部に指示を出します。
空爆するための爆撃機が出撃する頃、銃弾が飛び交う戦場でクリスはバーンズと対峙します。
抑えきれない怒りでバーンズに襲い掛かりますが、やはり力の差は歴然だったため返り討ちに遭って逆に殺されそうになった時、空爆が開始されます。
敵は逃げましたが米軍も大きな損害を受けました。
そしてクリスはその場に生存していたバーンズを射殺し、ヘリによって救出されていったのでした。
みどころのポイント
戦争というのはカッコいいものではなく、野蛮で汚くて人間が持つ尊厳を根底から失うというリアリティが追求された作品です。
ストーリー的には志願してまでベトナムに派遣されたクリスの目線によって展開されていきますが、そこには同じ米兵でありながら考え方の違いから殺害にまで発展してしまうという人間のエゴが強く描かれていて、戦争そのものよりも人間の心理を強く表現している作品と言えるのではないでしょうか。
クリスは最初、軍人として立派に見えたバーンズ二等軍曹に惹かれていきます。
グロージョン三等軍曹は大麻に溺れ、その仲間もキャンプでは堕落した生活をしていたので幻滅したのも理由でしたが、戦いに参加していく内に、バーンズは冷酷非情で敵兵どころか民間人までも容赦なく命を奪うような卑劣な人間だと知り、それに対して敵であろうと人道主義を貫くグロージョンに傾倒していくのは、クリスがまだ人間としての心を失っていない表れだと思います。
戦争というのはどちらが正しくてどちらが間違っているというのはないというメッセージが強く出ていて、それをグロージョンの言葉で発信したのは監督の戦争に対する強い憤りからではないでしょうか。
戦争を美化してはいけないという訴えからか、この作品では米兵による敵国の民間人に対する婦女暴行のシーンが撮られています。
これは普通なら有り得ないシーンであり、特に自分の国の恥部を曝け出すようなものをアメリカ人の監督が撮影したところに、この監督の戦争に対する強い気持ちの一旦が見て取れたようでした。
ラストシーンは志願してまで戦争に参加したクリスが、虚ろな目で戦場を見つめながらヘリに乗っているもので、結局、自分は何も得られず、ただ焦燥感しか残らないという戦争の無情さを訴えかける場面となっています。
最後まで見続けてもすっきりとした気持ちにはなれず、寧ろ戦争に対する不快感しか残りませんでしたが、それでもこの映画が大ヒットしたのは、そんな当たり前のことを気づかせてくれるリアリティではなかったからではないでしょうか。
いくら戦争を美化しても所詮は国による大量虐殺であり、それによって得られるものは国にとっての利益だけであり、人間には心の傷として残るだけのはかなさしかないというのを痛感した作品です。
この映画は戦争映画ではなく、ヒューマン映画として見るべき作品だと言えます。