【SPIRIT(スピリット)】の作品情報(スタッフ・キャストなど)
「SPIRIT(スピリット)」は2006年に公開された香港のアクション映画です。
中国の伝説的な武闘家フォ・ユェンジャの生涯を描いた伝記映画でもあります。
監督を務めたのはロニー・ユーです。
脚本はクリスティン・トーとクリス・チョウの共同脚本、主演はジェット・リーで、共演に中村獅童やスン・リーなどが出演しました。
なお音楽は梅林茂で、アクション監督にはハリウッドなどで活躍するユエン・ウーピンが務めています。
あらすじ解説
フォ・ユェンジャは幼少期から格闘技を習い、父から格闘技の書物も読むように言われています。
その忠告を聞かずフォは友達と隠れて修行に励んでいました。
フォは大人になり地元の格闘技大会で腕試しをします。
大会では勝ち進み彼は自信をつけていきました。
大会の勝利は広く知れ渡り、天津地方でも有名人になります。
ところがだんだんと不遜になっていき、短気で粗暴な性格になっていきました。
この性格によりトラブルが生じていきます。
ある結婚式で男の家に押しかけて勝負を挑み、式をメチャクチャにしてしまいます。
このトラブルがきっかけになり母親と子どもを失ってしまいました。
彼はショックを受け、戦うことを辞め、街を放浪します。
歩いていくと農村にたどり着いていました。
髪は乱れ、髭は生えっぱなしの風貌のフォは農村の娘に救われます。
彼女と交流していると失っていた気持ちが蘇る気がしました。
そして次第に武術を通して生きる意味を考えます。
あるとき、農民が他のものに襲われている場面に遭遇し、格闘して倒すと、主人公はもう一度天津に帰ることを決意するのです。
その頃、中国では世界武術選手権が行われていました。
中国の武術家はアメリカ人に圧倒されており、アメリカ人から馬鹿にされる始末です。
フォはその姿を見て、行き先を武術大会の行われている上海へと変えます。
上海に着くとさっそく大会に参加します。
初めての相手はアメリカ人でした。
彼は軽くいなすようにアメリカ人を倒すと、外国人選手たちはその姿に動揺が走ります。
彼らは最強を決めるために異種格闘技戦を行うことを提案し、フォに参加を持ちかけます。
フォの幼馴染は出場することに反対でした。
主人公は自分の力を試すいい機会と捉えて、試合に出場することにします。
ついに最強を決める戦いが始まりました。
主人公はヨーロッパの強豪たちを次々と倒していき、最後の相手は日本人(中村獅童)です。
彼は柔道家でフォの武道に理解のある、最後の相手としてはふさわしい相手です。
試合前にはお互いにお茶を飲んで、気持ちをリラックスさせます。
フォの最後の戦いが始まります。
お互いに最高の技術をぶつけ合う戦いとなりますが、勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか。
みどころのポイント
「SPIRIT(スピリット)」は公開前から大きな注目を集めていました。
なぜなら主演のジェット・リー(リー・リンチェイ)がこの映画でアクション俳優を引退すると公言していたからです。
ジェット・リーは香港を代表する映画俳優です。
彼は少林寺拳法の使い手で、映画デビュー前には中国の武術大会で優勝したほどの達人です。
これまで香港映画には数々のアクション映画スターが生まれていますが、実績だけならジェット・リーの右に出る人はいません。
彼の戦闘シーンは非常に早く、カンフー映画を大きく進歩させました。
中国や香港にとっての英雄的な存在であるため、引退宣言がなされたときはファンに衝撃が走ります。
幸いジェット・リーはこの映画の後にもアクション俳優を続けることになりましたが、映画は大きな注目を集めました。
引退を覚悟した作品なのでアクションシーンは今まで以上に力の入ったものになっています。
まずアクション監督としてユエン・ウーピンを招聘しました。
ユエン・ウーピンはハリウッドの大作映画でも演技指導を行う第一人者で、売れっ子のスタッフです。
彼によって演技が付けられたジェット・リーの動きは今までにない進化を見せています。
作品のハイライトといえるのは最後の戦いでしょう。
主人公・フォの相手は、なんと日本人の柔道家でした。
日本人柔道家の田中安野を中村獅童さんが演じています。
試合の前にお茶を飲むシーンは、いかにも海外の人の考える日本という感じで、少し笑えるシーンですが試合はとても熱いものです。
試合の展開もフォは日本の武道を、田中は中国の武道を尊敬しており、それは試合中にも随所に挟まれています。
試合が終わる頃には、もはや戦いはどちらが強いというわけではなく、それを越えた何かを主人公が掴んでいることが分かります。
これが、これまでアクション俳優として歩んできたジェット・リーの答えなのかもしれません。
映画は格闘シーンも多いですが、主人公が道に迷ったり、生きる意味を考えたりと、大味な映画ではなく奥行きのある作品に仕上がっています。
ジェット・リーの最後を飾るのにふさわしい物語になっているので、ジェット・リーのファンは必見といえるでしょう。