【薔薇の名前】の作品情報(スタッフ・キャストなど)
「薔薇の名前」は1986年に公開されたミステリー映画です。
製作国はフランスとイタリアそして西ドイツです。
薔薇の名前はウンベルト・エーコの同名の小説の映画化作品で、脚色がされています。
この映画の監督をしたのはジャン=ジャック・アノー監督です。
フランスの映画監督で1970年代から活躍し、ハリウッド映画へも進出しています。
主演はショーン・コネリーです。
ジェームズ・ボンドを演じたイギリスを代表する俳優です。
共演にはクリスチャン・スレーターやロン・パールマンなどが出演しています。
あらすじ解説
北イタリアの山にそびえる修道院を背景に、メルクのアドソ(クリスチャン・スレーター)のナレーターで物語は始まります。
アドソは自分が若い頃に起きた恐ろしい事件を語るといいます。
1327年北イタリアの修道院、巨大な門をくぐっているのはウィリアムとアドソです。
門をくぐると修道士から挨拶をもらい、二人は敷地内へと進みました。
脇には修道院に税金を払うために列をなす、貧民たちがいました。
二人は個室に入ると、アドソはトイレに行きます。
そこに院長のアッボーネが現れました。
アッボーネは挨拶を終えると、何か話したそうにしています。
ウィリアムが促すとアッボーネは話し始めました。
最近、修道士が亡くなった事件がありました。
若い修道士が図書館から飛び降りた事件でしたが、図書館には窓がありません。
また、死んだ男の動機も分かりません。
このことが周囲に動揺を与えていると言います。
ウィリアムは「超自然の力」が働いたのではないかというと、アドソが戻ってきました。
院長は事件の解決のため二人の協力を得たいと申し出て、彼らは怪死事件の解明をすることになりました。
さっそく事件現場に向かうと、坂になっています。
試しに石を転がしてみたところ、遺体の場所まで転がっていきました。
これで本当の落下場所が分ります。
二人が話していると残飯ゴミが投げられ、そこに貧民たちが群がります。
その貧民たちのなかに少女がいました。
アドソは彼女を見つめていると、少女と目が合い二人はしばし見つめ合いました。
場面は図書館に移り、ウィリアムとアドソは一階の写字室に入ります。
大勢の修道士たちが作業をしており、死んだ男はここの挿絵画家だったようです。
その男の作業机に案内してもらうと、生前に描いていた写本の挿絵がありました。
机を調べ終えて離れると悲鳴が聞こえます。
ベレンガーという副司書のあげた悲鳴で、走る鼠に驚いてあげた声でした。
室内は笑い声で満ちますが、突然「笑うな」という声が響きました。
声を発したのは長老のホルヘです。
ウィリアムが「笑うことは禁止ですか」と聞くと、盲目の老人は意味深な言葉を述べます。
キリスト教において笑いは悪だというのです。
この「笑い」というキーワードが悲劇の始まりだったことが明かされます。
以上があらすじです。
みどころのポイント
原作はウンベルト・エーコの「薔薇の名前」ですが、この小説はミステリー史に残る名作であり、映画化される噂が出ては大きな注目を集めました。
これまでにも何度か映画の話は出ていましたが、1986年に実現します。
大変著名な小説の映画化ということがあって、製作は国をまたいで協力したものになりました。
監督のジャン=ジャック・アノーはフランスの映画監督で、主演はイギリス人俳優のショーン・コネリーです。
プロデューサーはドイツのヒットメーカーのベルント・アイヒンガー、共演にはアメリカ人のロン・パールマンやクリスチャン・スレーターが出演しています。
そもそもウンベルト・エーコはイタリアの小説家です。
今では製作国が複数になることは少なくないですが、1986年当時は画期的なもので、この作品への力の入れようが伝わってきます。
国際色豊かなスタッフと俳優陣が集結しているので、非常に贅沢な作品と言えるでしょう。
さて、この物語はある若い修道士の自殺事件を解明するのがテーマです。
ウィリアムとアドソの二人が探偵役と助手になるのですが、これにはミステリー好きを喜ばせる小ネタが挟まれています。
ウィリアムは周囲から「バスカヴィルのウィリアム」と呼ばれますが、このバスカヴィルとはシャーロック・ホームズの長編「バスカヴィル家の犬」からとられています。
アドソはホームズの相棒・ワトソンの役割が与えられました。
こうした小ネタが物語のなかに随所に挟まれており、ミステリー好きを楽しませてくれます。
物語の謎は「笑い」にありますが、これはアリストテレスの著作がモチーフです。
古代ギリシアの哲学者アリストテレスには笑いに関する著作があるとされ、この書物を巡ったドラマが展開されます。
物語が進むと密室殺人事件なども起こりますが、その謎にも書物が関係しています。
非常に練られたトリックなので、真相が明かされるとスッキリするでしょう。
ウィリアムを演じたショーン・コネリーが名探偵ぶりを遺憾なく発揮しており、中世ヨーロッパのおどろおどろしい雰囲気も完璧に再現されています。
「薔薇の名前」は名作であり、ミステリーが好きなら見ておいて損はない一作といえるでしょう。